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と!キスイチャッピーかに奈々様ストーリー335
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虎猿
2025/04/11(金) 19:54:03 jLwIqGfQvn [iPhone]
秋の終わり、かには祖母の家を訪れた。庭には古い柿の木があり、葉が落ちた枝に、いくつかの実がまだぶら下がっていた。

「これ、じいちゃんが育てたんよ」と祖母が微笑む。かには脚立に登り、慎重にひとつの柿をもいだ。傷一つない、見事な橙色。幼いころ、祖父と一緒にこの柿を取り合いながら笑った記憶が、ふと蘇る。

その夜、切った柿を家族で囲む。甘くて、優しい味だった。祖父の席は空いたままなのに、なんだかそこにいるような気がした。

「柿、あんま好きちゃうけど、今日のは…うまいな」

かにの声に、祖母がそっと頷いた。冬の風が静かに吹き、柿の実がひとつ、ぽとりと地面に落ちた。
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