2025/04/11(金) 21:11:14 OV64w5Amsj [iPhone]
かには薬局を出て、びしょ濡れのままバイクを走らせた。届け先は、昔のバンド仲間・アキ。今は体を壊し、狭いアパートで一人きりだった。
玄関を開けると、痩せ細ったアキが咳をしながら出てきた。「悪いな、こんな時間に…」
かには黙って薬を渡し、濡れたジャケットを脱いで部屋に入る。「…寒くないか?」
アキは笑った。「お前の声、あったかいな。久しぶりに聴いた気がする」
かにはソファに腰を下ろし、小さく言った。「あんとき、お前が止めてくれてなかったら…俺、今ここにいないわ」
アキは黙って天井を見上げたあと、ポツリとつぶやいた。「バンド、またやりてぇな」
かにはうなずいた。「じゃあ、また始めようや。体治してからでええ」
雨音の中、ふたりの沈黙が優しかった。痛みも、過去も、分け合える気がした。