2025/04/14(月) 08:05:11 vUkAXgKnbf [iPhone]
「最終試練──やさしさの残響」
限界を超え、何もかもを失いかけたかにの前に、ふと小さな風鈴の音が響いた。空間がゆっくりと色を取り戻し、写楽が現れる。だが、いつものような狂気はなかった。
「君はよく耐えたね。私の試練は、“痛み”ではなく“気づき”のためにあった」
かには床に倒れ込み、弱々しく問う。「何を……気づけってんだよ……」
写楽は微笑み、扇子を一振り。「たったひとつ、“自分はまだ誰かに優しくできるか”だ」
その瞬間、どこからかキスイの声。「かにー!なんか知らんけど心配して来たぞー!」
チャッピーも叫ぶ。「オレら、お前がいなくなったらつまんないって思ったんだよ!」
扉が開き、光が差し込む。かにはぼろぼろの体を引きずりながら、笑った。
「……俺、まだ優しくできる気がする」
写楽はそっと背を向け、消え際に一言だけ残した。
「なら、試練はもう必要ない」