2025/07/15(火) 01:23:40 sDbZ9okHT2 [Windows]
ふもとのほうから坂道をやってくるのは3つの影。ウェストミンスター公爵、アーチボルド・フィッツヒュー閣下、バースとウェルズの主教だった。影から影へひそやかに、それでいて弾むような足どりでやってくる。骨と筋だけのやせ細った体にぼろぼろの服をまとい、飛び跳ねたかと思うと、足音を忍ばせ、ゴミ箱を飛び越えたかと思うと、生け垣の影に身をひそめる。体は小さく、普通の大きさの人間が太陽の光でしなびてしまったみたいだ。互いに低い声で、「ここがいずこか、われらより確たる答えがあるなら、そうぬかすがいい。そうでないなら、その腐った口を閉じておけ」 「だから、近くに墓地があると言っておるではないか。墓地のにおいがする」 「ぬしが気づくほどのにおいなら、このわしが気づかぬはずはない。鼻はわしの方が鋭いのだからな。」などと話している。そのあいだにも、郊外の家々の庭を通りぬけていく。避けた庭もある。(アーチボルド・フィッツヒュー閣下が声をひそめて、「いかん!犬だ!」と警告したのだ)。その庭を囲む塀の上を人間の子供サイズのネズミのように走り、大通りに下りて、丘の頂に向かう。やがて墓地の塀までやってくると、木を登るリスのように塀を登って、あたりのにおいをかいだ。「犬に気をつけろ」ウェストミンスター公爵がいった。「どこだ?よく分からん。このあたりにいるはずだが。何にしても、まともな犬のにおいではない」バースとウェルズの主教がいった。「この墓地のにおいにも気づかなかったくせに、何をぬかすか」アーチボルド・フィッツヒュー閣下がいった。「もう忘れたのか?ただの犬だ」三人、いや三匹は塀から地面に飛びおりると、走り出した。脚だけでなく腕まで使って墓地を駆け抜け、雷に打たれた木の脇のグールゲートにむかう。そして、月明かりに照らされたゲートのそばで立ちどまった。「いったいこれはなんなのだ?」バースとウェルズの主教がいった。「はてさて」ウェストミンスター公爵がいった。