火曜日の朝早く、アクロイド夫人からの往診の依頼があった。急を要することのように思われたので、私は重体の夫人を目にすることになるのを覚悟しながら、急いで屋敷に駆けつけた。
夫人はベッドの中にいた。医者を呼び出した以上、それが礼儀だと考え、譲歩したのだ。彼女は骨ばった手をわたしに差しのべ、ベッドわきの椅子を示した。
「さて、アクロイド夫人」わたしはいった。「どうなさったのですか?」
私は主治医に期待されている、見せかけだけの思いやりを込めてたずねた。
「わたし、まいってしまって」夫人は弱々しい声でいった。「気力がすっかり萎えてしまいましたの。可哀想なロジャーの死のショックのせいですわ。渦中にあるときは実感がわかない、とよくいいますでしょう。あとになって、こたえているんですわ」
残念なことに、職業上、医者は本心を口に出せないことがある。
「くだらん!」と一喝できるなら、何を差し出しても惜しくなかっただろう。
だが、その代わりに、私は強壮剤を勧めた。アクロイド夫人はそれを飲んだ。これで駆け引きのゲームは、一手進んだようだった。一瞬たりとも、アクロイドの死がもたらしたショックのせいで、往診を頼まれたとは信じていなかった。しかし、夫人はどんな話をするにも、単刀直入に切り出すことの出来ない人間だった。常に、回りくどいやり方で目的に近づいていくのだ。どうして呼びつけられたのだろう、と私は首を傾げていた。
「それで、あの騒ぎですけど——きのうの」と患者は続けた。
私がそれで察してくれると言わんばかりに、夫人は言葉を切った。