2026/11/07(土) 01:52:47 hYkbhKdUNy [Windows]
前に立ち寄った世界に、故郷の情景が描かれた世界があってね。それは、恐ろしいほどに正確で鮮明、何より神秘的だった。不安になるくらいにね。その時、この世界に漂流して初めて、懐かしさを感じたよ。僕はこの世界をホームシックと呼ぶことにしたんだ。「故郷って、元の世界ってこと?」ああ、だけど、ちょっと違うんだ。元の世界より、元の世界らしい世界だった。その世界の主は、病的なほど思い出に囚われ、故郷を描き続けたんだ。奇妙なことにその世界には、どこまで行っても人っ子一人、人間は描写されていなかった。「さみしいところねぇ」でも、ある時期を迎えると、ガラリと作風が変わるんだ。その絵を見て、ハッとしたよ。それは、ある女子生徒の肖像だった。とても美人に描かれていてねぇ、どうやら、彼女は彼の恋人らしかった「面白くなってきたじゃん」だろ?僕も好奇心に負けてね、独自に開発した能力遺物スクープスコープで、彼女を覗いてみたんだ。「どうだった?」実際の彼女は、絵ほど美人じゃなかった。「あっははは、恋の色眼鏡は度がきついからさぁ」でも彼女は彼のことを本当に愛していた。気になってほかの絵ものぞいてみたんだ。実際の故郷は、彼の描く絵のように美しくも、大して魅力もない、僕のよく知ってる町だった。簡単な話、彼は現実を受け入れなかったんだよ。恋人も彼に目の前の現実を生きてほしいと願っていた。でも彼は変わらなかった。そしてついには愛想をつかしてその世界から出て行ってしまうんだ。すると彼は今度は取りつかれたように恋人の絵を描き始めた。肖像の彼女は、その絵だったんだ。